EDにおけるオルニチンサイクル
ED(勃起障害)におけるオルニチンサイクル(尿素回路)の関与は、直接的には「アンモニア処理」ではなく、L-アルギニン → 一酸化窒素(NO)生成系との連携を通じて血管拡張・勃起機能に関係します。
オルニチンサイクルとは
オルニチンサイクル(尿素回路)は、主に肝臓で働く代謝経路で、体内の有害なアンモニア(NH₃)を無害な尿素に変換して排出する仕組みです。
この回路では以下のアミノ酸が順に変化します:
オルニチン → シトルリン → アルギニノコハク酸 → アルギニン → オルニチン(再生)
アルギニンが分解されて尿素とオルニチンを生じる、という循環です。
ED(勃起障害)との関連メカニズム
オルニチンサイクルの中核物質のひとつであるL-アルギニンが、ED改善に重要な役割を担います。
① オルニチンサイクルとNO(一酸化窒素)の橋渡し
オルニチンサイクルの途中で生成される L-アルギニン は、尿素生成だけでなく、一酸化窒素合成酵素(NOS) により NO(一酸化窒素) に変換されます。
この経路は次のようになります:
L-オルニチン → L-シトルリン → L-アルギニン → NO + シトルリン
オルニチンサイクルを介して生成された アルギニン → NO生成 → 血管拡張 → 勃起促進
という流れが生じます。
② NOによる勃起の生理作用
- 性的刺激を受けると、陰茎海綿体の神経終末や血管内皮でNOが放出される
- NOが平滑筋細胞に作用し、cGMP(環状グアノシン一リン酸)を増加させる
- 平滑筋が弛緩し、血流が増加
- 海綿体に血液が充満し、勃起が維持される
このNO生成を支える材料が、まさにオルニチンサイクル経由で供給されるアルギニンとシトルリンです。
③ オルニチンとシトルリンの役割
- オルニチンはアルギニンの前駆体として、間接的にNO生成をサポート
- シトルリンはアルギニンに再変換されることで、NO生成を持続的に支える
→ つまり、オルニチン・シトルリンの補給はアルギニン-NO経路の活性化につながります。
④ EDにおける代謝的意義
ED患者では次のような特徴が見られることがあります:
- 加齢・糖尿病・高血圧などにより内皮機能が低下
- その結果、NO産生が低下
- さらにアルギニン代謝の低下やアンモニア負荷増加が代謝経路を阻害
オルニチンサイクルを活性化し、アルギニン→NOの流れを促すことが、ED改善の代謝的アプローチとなります。
EDとオルニチンサイクルの関係
オルニチンサイクル(肝臓)
↓
L-アルギニン生成
↓(NOSによる変換)
一酸化窒素(NO)生成
↓
血管平滑筋弛緩
↓
陰茎海綿体への血流増加
↓
勃起促進(ED改善)
補足
- シトルリンやオルニチンのサプリメントは、アルギニン単体よりも持続的にNOを増やすと報告されることがあります。
- 一方で、腎・肝疾患や高アンモニア血症のある人では、オルニチンサイクルの補助は慎重に行う必要があります。




