一酸化窒素とは
「一酸化窒素(NO:Nitric Oxide)」は、ED(勃起不全や勃起機能)や血管の健康を理解する上でとても重要な物質です。
一酸化窒素(NO)とは?
一酸化窒素(Nitric Oxide, NO) は、体の中で自然に作られる ガス状の信号物質(メッセンジャー) です。
人間の体内では ごく微量で血管や神経を調整する重要な役割 を果たしています。
NOの主なはたらき
- 血管を広げる(血流をよくする)
- NOは血管の内側の細胞(血管内皮細胞)から分泌され、血管の筋肉(平滑筋)をゆるめます。
- これにより血流がスムーズになり、血圧が下がります。
→ 心臓病・脳卒中・ED(勃起不全)などに深く関係します。
- 勃起のしくみに関与
- 性的刺激を受けると、陰茎の神経からNOが放出されます。
- NOが「cGMP」という物質を増やし、血管を広げて陰茎に血液が流れ込み、勃起が起こります。
- PDE5(ホスホジエステラーゼ5型)はそのcGMPを分解して勃起を終わらせます。
つまり:
NO → cGMP ↑ → 血管拡張 → 勃起
という流れです。
- 免疫系の調整
- 白血球が細菌やウイルスを攻撃する時にもNOが使われます。
- 炎症反応や免疫のバランスに関与しています。
- 神経伝達物質としての働き
- 脳や神経でも、NOはシナプス伝達(神経間の信号)を助けます。
- 記憶・学習・快感(報酬系)などにも関与していると考えられています。
NOが作られるしくみ
NOは、L-アルギニンというアミノ酸から作られます。
この反応を行う酵素が「一酸化窒素合成酵素(NOS)」です。
種類は3つあります:
酵素名 | 主な働く場所 | 役割 |
---|---|---|
eNOS(内皮型) | 血管内皮 | 血管を広げ、血流を調整 |
nNOS(神経型) | 神経 | 勃起や神経伝達 |
iNOS(誘導型) | 免疫細胞 | 炎症や免疫反応 |
NOのバランスが崩れると?
- NOが少ない → 血流が悪くなる、ED、高血圧、動脈硬化
- NOが多すぎる → 炎症や酸化ストレス(細胞ダメージ)
つまりNOは「ちょうどいい量」が健康に必要なのです。
NOを増やす方法
方法 | 説明 |
---|---|
運動 | 血流がよくなり、eNOS活性が上がる |
食事 | L-アルギニン(ナッツ、大豆、肉、魚)やL-シトルリン(スイカなど) |
野菜 | ニトレート(ほうれん草、ビーツ)がNOに変化 |
禁煙 | タバコはNOを減らす |
ストレス管理 | ストレスホルモンはNO生成を抑える |
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 一酸化窒素(Nitric Oxide, NO) |
物質の種類 | ガス状のシグナル分子 |
主な働き | 血管拡張、勃起、神経伝達、免疫調整 |
合成酵素 | NOS(nNOS・eNOS・iNOS) |
関係する疾患 | ED、高血圧、動脈硬化、炎症性疾患 |
PDE5阻害薬との関係 | NOが作るcGMPをPDE5が分解、阻害薬がそれを防ぐ |