一酸化窒素とは

一酸化窒素(NO:Nitric Oxide)」は、ED(勃起不全や勃起機能)や血管の健康を理解する上でとても重要な物質です。


一酸化窒素(NO)とは?

一酸化窒素(Nitric Oxide, NO) は、体の中で自然に作られる ガス状の信号物質(メッセンジャー) です。

人間の体内では ごく微量で血管や神経を調整する重要な役割 を果たしています。


NOの主なはたらき

  1. 血管を広げる(血流をよくする)
    • NOは血管の内側の細胞(血管内皮細胞)から分泌され、血管の筋肉(平滑筋)をゆるめます。
    • これにより血流がスムーズになり、血圧が下がります。

    → 心臓病・脳卒中・ED(勃起不全)などに深く関係します。


  1. 勃起のしくみに関与
    • 性的刺激を受けると、陰茎の神経からNOが放出されます。
    • NOが「cGMP」という物質を増やし、血管を広げて陰茎に血液が流れ込み、勃起が起こります。
    • PDE5(ホスホジエステラーゼ5型)はそのcGMPを分解して勃起を終わらせます。

つまり:
NO → cGMP ↑ → 血管拡張 → 勃起
という流れです。


  1. 免疫系の調整
    • 白血球が細菌やウイルスを攻撃する時にもNOが使われます。
    • 炎症反応や免疫のバランスに関与しています。

  1. 神経伝達物質としての働き
    • 脳や神経でも、NOはシナプス伝達(神経間の信号)を助けます。
    • 記憶・学習・快感(報酬系)などにも関与していると考えられています。

NOが作られるしくみ

NOは、L-アルギニンというアミノ酸から作られます。
この反応を行う酵素が「一酸化窒素合成酵素(NOS)」です。

種類は3つあります:

酵素名 主な働く場所 役割
eNOS(内皮型) 血管内皮 血管を広げ、血流を調整
nNOS(神経型) 神経 勃起や神経伝達
iNOS(誘導型) 免疫細胞 炎症や免疫反応

NOのバランスが崩れると?

  • NOが少ない → 血流が悪くなる、ED、高血圧、動脈硬化
  • NOが多すぎる → 炎症や酸化ストレス(細胞ダメージ)

つまりNOは「ちょうどいい量」が健康に必要なのです。


NOを増やす方法

方法 説明
運動 血流がよくなり、eNOS活性が上がる
食事 L-アルギニン(ナッツ、大豆、肉、魚)やL-シトルリン(スイカなど)
野菜 ニトレート(ほうれん草、ビーツ)がNOに変化
禁煙 タバコはNOを減らす
ストレス管理 ストレスホルモンはNO生成を抑える

まとめ

項目 内容
名称 一酸化窒素(Nitric Oxide, NO)
物質の種類 ガス状のシグナル分子
主な働き 血管拡張、勃起、神経伝達、免疫調整
合成酵素 NOS(nNOS・eNOS・iNOS)
関係する疾患 ED、高血圧、動脈硬化、炎症性疾患
PDE5阻害薬との関係 NOが作るcGMPをPDE5が分解、阻害薬がそれを防ぐ