cGMPとは
ED治療薬(バイアグラなど)のしくみを理解する上で、「cGMP(サイクリックGMP)」は中心的な役割を担っています。
cGMPとは?
cGMP(サイクリックGMP) とは、体の中で「血管を広げる信号」として働く物質です。正式名称はcyclic guanosine monophosphate(サイクリック グアノシン モノリン酸)。「サイクリック(環状)」という名前の通り、化学的には輪っか状の構造を持つ分子です。
cGMPの役割
一言でいうと:血管の筋肉をゆるめて、血流を増やすというのがcGMPの主な仕事です。
どうやって作られるの?
cGMPは、次のような流れで作られます
- 性的刺激を受ける
↓ - 神経から「一酸化窒素(NO)」が放出される
↓ - NOが「グアニル酸シクラーゼ」という酵素を活性化
↓ - その酵素が「GTP(グアノシン三リン酸)」をcGMPに変換する
↓ - cGMPが「血管をゆるめる」信号を出す
↓ - 血流が増え、勃起が起こる
まとめると:
性的刺激 → NO → cGMP ↑ → 血管拡張 → 勃起
cGMPがどこに働くのか?
主に血管の平滑筋細胞(へいかつきんさいぼう)に作用します。この細胞がゆるむことで、血管の内径が広がります。cGMPは細胞内で「タンパク質キナーゼG(PKG)」という酵素を活性化し、カルシウム(Ca²⁺)濃度を下げることで筋肉をゆるませます。
cGMPはどうやって消えるの?
勃起がずっと続くわけではありません。その理由が「PDE5(ホスホジエステラーゼ5型)」です。PDE5はcGMPを分解して、もとの「GMP」に戻します。これにより血管が再び締まり、勃起が収まります。
つまり:
状態 | cGMP | PDE5 |
---|---|---|
勃起中 | 多い | 抑えられている |
勃起終了 | 少ない | 活性化される |
PDE5阻害薬の働き
ED治療薬(例:バイアグラ・シルデナフィル)は、この PDE5の働きを止める ことで、cGMPの量を維持し、血管の拡張状態を長く保ちます。
つまり:
PDE5阻害薬 → PDE5が止まる → cGMPが分解されない → 血流が続く
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | cGMP(サイクリックGMP) |
物質の正体 | GTPから作られる環状ヌクレオチド |
主な働き | 血管をゆるめて血流を増やす |
作る酵素 | グアニル酸シクラーゼ(NOで活性化) |
分解する酵素 | PDE5(ホスホジエステラーゼ5型) |
PDE5阻害薬の効果 | cGMPを分解させず、勃起を助ける |
つまり、
NOは「スイッチを入れる役」、cGMPは「血流を増やす信号の本体」、PDE5は「スイッチを切る役」という関係です。