ミノキシジルの内服は有用か?
推奨度:D
推薦文:ミノキシジルの内服を行うべきではない.
解説:ミノキシジル内服の有用性に関して臨床試験は実施されていない.ミノキシジルは降圧剤として開発されたが本邦では認可されていない.また,男性型脱毛症に対する治療薬としても認可されている国はない.それにもかかわらず,全身の多毛症を起こす副作用があることを根拠に,医師が安易に処方したり,一般人が個人輸入で入手し服用することがあるので,医薬品医療機器等法の観点から問題視されている.多毛症以外のミノキシジル内服薬の副作用の報告は少なく,内服用製剤の添付文書中の市販後調査欄に,胸痛,心拍数増加,動悸,息切れ,呼吸困難,うっ血性心不全,むくみや体重増加などの重大な心血管系障害が生じるとの記載がある.以上のように,ミノキシジルの内服療法は,利益と危険性が十分に検証されていないため,男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧められる.
エビデンスのレベル分類
I システマティック・レビュー/メタアナリシス
II 1 つ以上のランダム化比較試験
III 非ランダム化比較試験
IV 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)
V 記述研究(症例報告や症例集積研究)
VI 専門委員会や専門家個人の意見
推奨度の分類
A.行うよう強く勧める
(少なくとも 1 つの有効性を示すレベル I もしくは良質のレベル II のエビデンスがあること)
B.行うよう勧める
(少なくとも 1 つ以上の有効性を示す質の劣るレベル II か良質のレベル III,あるいは非常に良質の IV のエビデンスがあること)
C1.行ってもよい
(質の劣る III~IV,良質な複数の V,あるいは委員会が認める VI のエビデンスがある)
C2.行わないほうがよい
(有効のエビデンスがない,あるいは無効であるエビデンスがある)
D.行うべきではない
(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)
ただし,本文中の推奨度が必ずしも上記の判断基準に一致しないものがある.その理由は,この分野では国際的にもエビデンスが不足している状況,日本の歴史的背景や特殊事情,さらに診療ガイドラインの実用性も考慮して,委員会のコンセンサスに基づき推奨度を決定した項目があるからである.
出典)日本皮膚科学会ガイドライン 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版