カルバモイルリン酸とは

カルバモイルリン酸(Carbamoyl phosphate)は、生化学上非常に重要な中間体で、主に尿素回路ピリミジン合成に関わる化合物です。体内でアンモニアを処理する過程や核酸の合成に必須です。


基本情報

項目 内容
化学式 H₂N–CO–O–PO₃²⁻
分類 高エネルギー化合物、中間代謝産物
主な働き 尿素回路、ピリミジン合成の基質
生成場所 肝細胞ミトコンドリア(尿素回路用)、細胞質(ピリミジン合成用)

主な作用と役割

  1. 尿素回路の開始物質
    • アンモニア(NH₃)と二酸化炭素(CO₂)から生成され、オルニチンと反応してシトルリンを作る重要なステップに使われます。
    • 尿素回路全体で、体内の有害なアンモニアを尿素として排泄する役割があります。
  2. ピリミジン合成の原料
    • 細胞質で、アスパラギン酸と反応してピリミジン塩基(C, U, T)の合成に使われます。
    • DNA・RNAの合成に不可欠です。
  3. 高エネルギー化合物としての性質
    • 化学結合に高エネルギーを含むため、次の反応でのエネルギー供給源としても働きます。

尿素回路での流れ(簡略図)

アンモニア + CO2
       │(カルバモイルリン酸合成酵素I)
       ▼
カルバモイルリン酸
       │
オルニチンと反応
       ▼
シトルリン
       │
アルギニノコハク酸 → アルギニン → 尿素排出
  • この回路でカルバモイルリン酸は「アンモニアを無毒化するための最初のステップ」と言えます。

注意点

  • 尿素回路の異常(例えばカルバモイルリン酸合成酵素欠損症)では、アンモニアが体内に蓄積し、高アンモニア血症となり神経障害を引き起こすことがあります。

まとめ

  • カルバモイルリン酸は、アンモニアを尿素に変換するための中間体であり、体内の毒性アンモニア処理DNA・RNAの材料供給に不可欠な分子です。