デュタステリドで報告されている生殖系および乳房障害の副作用

デュタステリド(ザガーロ等)で報告されている「生殖系および乳房障害」の副作用について、医学的背景を含めてわかりやすく解説します。
これらは必ずしも高頻度ではありませんが、男性ホルモン(DHT)抑制という作用機序に直結した副作用です。


まず作用メカニズム

デュタステリド5α還元酵素(Ⅰ型・Ⅱ型)を強力に阻害し、テストステロンを DHT(ジヒドロテストステロン)へ変換する反応を抑制します。

DHTは、

  • 男性機能
  • 性欲(リビドー)
  • 勃起機能
  • 精液量
  • 精巣機能
  • 男性乳房の抑制(女性化乳房の抑制)

などに関係するため、DHTが低下することで副作用が出る可能性があります。


【副作用】生殖系および乳房障害の詳細解説

① 性機能不全

デュタステリドを服用すると、下記のような性的機能の変化が報告されています。

● リビドー(性欲)減退

性衝動や性欲が低下する症状です。
原因:

  • DHT低下による脳内ホルモンシグナル変化
  • 性ホルモン受容体への刺激減少
  • 精神面の影響(服薬不安、体感の変化)

テストステロン(血中)は保たれていても、DHTが減ることで性欲が変化する人がいます。


● 勃起不全(ED)

性的刺激があっても勃起しにくくなる・維持できない状態です。

メカニズム:

  • DHTは陰茎海綿体の機能維持に関係
  • 神経性ED(気分低下など)
  • 内分泌性ED(ホルモンバランス関連)

※大型研究では頻度は低いとされていますが、副作用としては重要項目です。


● 射精障害

射精量の減少、射精感の低下、稀に射精できないケースも含まれます。

メカニズム:

  • DHT低下により前立腺・精嚢の分泌量が低下
  • 精液量が減る → “射精した感覚が弱くなる”
  • 駆出力も変化

※精液量の軽度減少は比較的よくある副作用です。


② 乳房障害(乳房関連症状)

男性で以下の変化が起こることがあります。

● 女性化乳房(男性型乳房肥大)

男性の乳房組織が肥大する症状です。
見た目に乳房が膨らむ、脂肪だけでなく乳腺増殖が起きるケースもあります。

原因:

  • DHT低下 → エストロゲン相対上昇
    (男性にも少量の女性ホルモンがあるため、バランスが崩れる)
  • テストステロン/エストロゲン比の逆転

※片側または両側に起こることがあり、乳頭周囲のしこり様の組織ができる場合もあります。


● 乳頭痛・乳房痛・乳房不快感

女性化乳房が進む前に、

  • 乳首が痛む
  • 胸が張る
  • 触ると違和感
    といった症状が出ることがあります。

※初期サインとして重要です。


③ 精巣痛・精巣腫脹

精巣(睾丸)に痛みや腫れが起きることがあります。

原因として考えられるもの:

  • ホルモンバランス変化による精巣機能の一時的変動
  • 精路系(精巣上体、精管など)炎症様反応
  • 精液生産低下による充満感

※多くは一過性で重症化は稀。


副作用はどれくらい起きる?

臨床試験では下記の傾向です:

  • 性欲減退:約1〜5%
  • 勃起不全:約1〜8%
  • 射精障害:1〜5%
  • 女性化乳房:0.5%未満(稀)
    ※ただし 頻度不明として添付文書では記載されることもあります。

症状は服用初期〜半年以内に起きることが多いですが、継続で改善するケース、服薬中止で戻るケースなど様々です。


注意すべきポイント

① 乳房症状は必ず相談

乳房の痛み、しこり、分泌物があれば医師へ。
非常に稀ですが、男性乳癌との鑑別が必要な場合があります。


② 性機能不全は治療可能

  • 投薬中止により改善することが多い
  • 補助療法(ED治療薬)で対処できる
  • 精神心理面のサポートが有効なケースも

③ 長期継続と副作用について

一部でポストフィナステリド症候群(PFS)類似の話題が出ますが、現時点ではデュタステリドに関して明確な因果証明はありません。ただし「症状が続く」と訴える患者がいることは医学論文でも議論されています。


総括(わかりやすくまとめ)

副作用カテゴリ 症状 原因
性欲低下 やる気が出ない DHT低下
勃起不全 勃起しにくい ホルモン変化・心理
射精障害 射精量減少 前立腺分泌減少
女性化乳房 胸が膨らむ エストロゲン相対増加
乳頭痛 痛み・しこり感 乳腺反応
精巣痛・腫脹 痛む・腫れる 精巣機能変動

実務的な対応

■ 「気づいたらどうする?」

  • 症状が軽い → 経過観察、医師に相談
  • 症状が持続 → 中止検討
  • 乳房関連 → 必ず医師に連絡
  • 精巣痛 → 除外診断(精巣炎など)

■ 検査

  • ホルモン検査(T、DHTなど)
  • 精液検査(必要時)
  • 乳房エコー
  • PSA、肝機能(併用薬による)

特に注意してほしい人

  • 性機能に敏感な若年男性
  • もともとリビドーやED問題がある人
  • 乳房の腫瘍歴がある人
  • ホルモン治療中の人