男性更年期における低性欲
「男性更年期における低性欲」について、ホルモンの働き・心身への影響・診断の視点から詳しく解説します。
1. 男性更年期における低性欲とは
男性更年期(LOH症候群)に見られる症状のひとつが リビドー(性欲)の低下 です。
ここでいう低性欲は、単に「疲れていて一時的に興味がわかない」という状態ではなく、以前に比べて明らかに性的関心や欲求が減少し、持続している状態 を指します。
2. 原因
(1)ホルモンの低下
- テストステロン(男性ホルモン)は 性欲を司る最も重要なホルモン
- 20代をピークに分泌量は減少し、40代以降は年間1〜2%ずつ低下
- 血中テストステロン値が下がると、脳の「性欲中枢」(視床下部・辺縁系)への刺激が弱まり、性的欲求が起きにくくなる
(2)心理・社会的要因
- 仕事や家庭のストレス
- 不眠・うつ傾向
- 人間関係の変化や孤独感
(3)身体的要因
- 生活習慣病(糖尿病・高血圧・肥満)による血流障害
- 勃起障害(ED)があると「どうせできない」という心理的抑制で性欲も低下
3. 症状の特徴
- 性的な刺激に対して興味がわきにくい
- 性的な空想や妄想が減少する
- 性行為の回数が減る
- 性生活の満足度が低下する
- 性欲はあるが、勃起力が伴わず「欲求と行動が一致しない」ケースもある
4. 診断の視点
- 主観的評価:AMSスコア(質問票)の性機能項目で確認
- 血液検査:遊離テストステロンや総テストステロンの測定
- 他の疾患との区別:うつ病や甲状腺疾患でも性欲低下は起こり得るため、鑑別が必要
5. 改善・治療の方向性
生活習慣の改善
- 適度な運動(筋トレ・有酸素運動でテストステロン分泌を促す)
- 睡眠の改善(睡眠不足はテストステロンを下げる)
- 栄養バランス(亜鉛・ビタミンD・良質なたんぱく質はホルモン合成に重要)
- 禁煙・節酒
心理的アプローチ
- ストレスコントロール(趣味、リラクゼーション)
- パートナーとのコミュニケーション
医療的アプローチ
- テストステロン補充療法(TRT):注射・ジェルなどで男性ホルモンを補う
- 必要に応じてED治療薬(PDE5阻害薬)の併用
- うつ症状が強ければ精神科的治療
まとめ
- 男性更年期の低性欲は テストステロンの低下が中心原因
- ただしストレス・生活習慣病・心理的要因も深く関わる
- 「性欲の低下=加齢だから仕方ない」と思われがちですが、生活改善やホルモン補充で改善できる可能性が高い