男性更年期における勃起不全
「男性更年期における勃起不全(ED)」を、ホルモン・血管・精神面の観点から詳しく解説します。
1. 勃起不全(ED)とは
勃起不全(erectile dysfunction, ED) は、性交に十分な勃起が得られない、または維持できない状態を指します。
男性更年期(LOH症候群)の症状の中でも代表的で、患者さんが受診する大きなきっかけになることが多いです。
2. 男性更年期におけるEDの特徴
- 性欲低下と並行して起こることが多い
- 「勃ちにくい」だけでなく「中折れする(維持できない)」ケースも多い
- 性的刺激があっても反応が鈍い
- 性生活の満足度が下がり、自信喪失や抑うつにつながる
3. 原因のメカニズム
(1)ホルモン性要因
- テストステロンは 性欲を高めるだけでなく、勃起に必要な神経や血管の働きをサポート
- 低テストステロン状態では、勃起に必要な一酸化窒素(NO)の生成が減り、陰茎の血流が悪くなる
(2)血管・身体的要因
- 加齢や生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症・動脈硬化)が陰茎の血管を狭くする
- 勃起は「血管の健康バロメーター」といわれ、EDは動脈硬化の早期サインになることもある
(3)神経・心理的要因
- ストレス、パートナーとの関係性、抑うつ症状
- 「失敗したらどうしよう」という不安 → 余計に勃たない「悪循環」
4. 診断の視点
- 問診・質問票:IIEF(国際勃起機能スコア)、AMSスコアなど
- 血液検査:テストステロン値、血糖値、脂質、肝腎機能
- 必要に応じて:血管系や神経の精査
5. 改善・治療法
生活習慣の改善
- 適度な運動(有酸素運動+筋トレ → 血流改善&テストステロン増加)
- 禁煙(タバコは血管収縮作用が強い)
- 節酒(大量飲酒は勃起に悪影響)
- バランスの良い食事(地中海食はED改善効果が示唆されている)
医療的アプローチ
- テストステロン補充療法(TRT)
- 血中テストステロンが低い場合に実施
- 性欲・勃起力の改善が期待できる
- ED治療薬(PDE5阻害薬)
- シルデナフィル(バイアグラ®)、タダラフィル(シアリス®)など
- 陰茎の血流を改善し勃起を助ける
- 心理・カウンセリング
- 性的不安やストレスが強い場合に有効
6. まとめ
- 男性更年期におけるEDは テストステロン低下+血管機能低下+心理的要因 が複合して起こる
- 「性欲低下」と「勃起不全」は別の症状だが、しばしば同時に現れる
- EDは生活習慣病や動脈硬化のサインでもあり、放置せず医師に相談することが重要