問題飲酒と軽度AUDの医学的境界線

DSM-5に基づく医学的視点での「問題飲酒」と「軽度AUD」の明確な境界線です。


「問題飲酒」と「軽度AUD」の医学的境界線

1. 結論

境界線は「量」ではなく「コントロール障害が出現したか」

  • 問題飲酒:
    害は出ているが、制御は保たれている
  • 軽度AUD:
    制御障害が始まっている(DSM-5で2–3項目)

2. 定義の整理(DSM-5準拠)

区分 医学的定義
問題飲酒 DSM-5基準を1項目以下しか満たさないが、健康・生活への悪影響あり
軽度AUD DSM-5 2–3項目該当(12か月以内)

※「問題飲酒」は正式診断名ではなく臨床用語


3. 境界を決める“2つの決定打”

決定打①:コントロール不能

以下が1つでも明確ならAUD側に傾く。

  • 「今日は1杯だけ」が守れない
  • 予定より量・時間が増える
  • 減らそうと決めても繰り返し失敗

量が少なくてもAUD


決定打②:渇望(Craving)

  • 飲まないと落ち着かない
  • 仕事中・移動中に飲酒を考える
  • 「飲めない状況」に不安・焦燥

DSM-5で新規追加された病的指標


4. 比較表

項目 問題飲酒 軽度AUD
飲酒量 多いことあり 少量でも可
自制 保たれる 破綻し始める
減酒 成功する 失敗を繰り返す
渇望 なし/弱い 明確
耐性 なし なくても成立
離脱 なし なくても成立
DSM-5該当 0–1 2–3

5. よくある誤診パターン

誤り①

「耐性・離脱がないから問題飲酒」

誤り
→ 軽度AUDでは耐性・離脱は不要


誤り②

「毎日飲まないから大丈夫」

誤り
→ 週末大量飲酒(Binge)でも制御不能+渇望があれば軽度AUD


6. 男性医療(ED・低T)での実践判定

3問スクリーニング(1分)

以下で2つ以上Yes → 軽度AUD疑い

  1. 減らそうとして失敗したことがある
  2. 飲めないとイライラ・落ち着かない
  3. 飲酒後に性欲・勃起が落ちると自覚している

7. 生理学的な境界(補足)

項目 問題飲酒 軽度AUD
睡眠構造 部分的破壊 慢性破壊
テストステロン 一過性低下 恒常的低下
SHBG 正常〜軽度↑ 明確に上昇
ED薬反応 効く 効きにくい

8. 介入方針の違い(重要)

区分 介入
問題飲酒 教育+飲酒量管理
軽度AUD 減酒+行動療法(場合により薬)

※軽度でも放置は進行リスク


9. まとめ(境界線の本質)

  • 量・頻度ではなく制御障害
  • DSM-5 2項目目が出た瞬間に疾患
  • 軽度AUDは最も回復しやすい時期