AUDとは

AUD(Alcohol Use Disorder:アルコール使用障害)の体系的解説です。


AUD(アルコール使用障害)解説

1. 定義(DSM-5)

AUDとは、飲酒のコントロール障害+有害な結果が持続している状態を指します。従来の「アルコール依存症/乱用」はAUDに統合されました。

診断基準(12か月以内に)

11項目中の該当数で重症度を判定:

該当数 重症度
2–3 軽度
4–5 中等度
6以上 重度

主な11項目(要約)

  1. 予定より多く・長く飲む
  2. 減らそうとして失敗
  3. 飲酒に多くの時間を費やす
  4. 強い渇望
  5. 役割(仕事・家庭)に支障
  6. 対人問題があっても継続
  7. 重要な活動を放棄
  8. 危険な状況で飲酒
  9. 身体・精神問題があっても継続
  10. 耐性
  11. 離脱症状

2. 病態メカニズム(脳科学)

報酬系の再配線

  • アルコール → ドーパミン↑(側坐核)
  • 慢性化 → 報酬感度低下 → より多量が必要

抑制系の破綻

  • 前頭前野(理性・抑制)の機能低下
  • 「わかっていてもやめられない」

GABA / グルタミン酸

  • 急性:GABA↑(鎮静)
  • 慢性:反跳で興奮優位 → 不安・不眠・震え

3. 身体への影響(男性に重要)

① ホルモン

  • テストステロン低下
  • エストロゲン相対優位(肝での代謝低下)
  • SHBG上昇 → 遊離T低下

ED・性欲低下・筋力低下・脂肪増加

② 性機能

  • 中枢性ED(興奮低下)
  • 末梢血管障害
  • PDE5阻害薬が効きにくくなる

③ 肝臓

  • 脂肪肝 → アルコール性肝炎 → 肝硬変
  • 薬物代謝異常(ED薬・AGA薬にも影響)

④ 睡眠

  • 入眠は良く見えるが深睡眠・REMが破壊
  • 朝のテストステロン分泌が低下

4. 精神・行動面

  • 不安障害・うつ・パニックの併存率が高い
  • 衝動性増大、判断力低下
  • 自殺リスク上昇

5. スクリーニング

簡易チェック

  • AUDIT / AUDIT-C
  • CAGE質問票

医療機関での評価

  • 問診+DSM-5基準
  • 血液:γ-GTP、AST/ALT、MCV、CDT
  • 併存疾患(うつ、睡眠障害、低T)の評価

6. 治療戦略(段階別)

① 減酒 or 断酒

  • 軽度:減酒から開始
  • 中等度以上:原則断酒

② 薬物療法

薬剤 作用
ナルメフェン 渇望低下(減酒)
ナルトレキソン 報酬遮断
アカンプロサート 離脱後の安定化
ジスルフィラム 嫌酒療法

③ 精神療法

  • 動機づけ面接(MI)
  • CBT
  • 家族療法

7. 「飲酒量」目安(日本)

  • 純アルコール20g/日以下が節度
  • ビール中瓶1本 ≈ 20g
  • 日本酒1合 ≈ 22g

※ AUDでは「量」よりコントロール不能性が本質


8. ED・AGA治療中の人向け重要ポイント

  • ED薬が効かない人はAUDを必ず除外
  • フィナステリド/デュタステリド代謝は肝依存
  • TRT前に飲酒是正は必須

9. 「嗜好」か「疾患」かの境界線

嗜好飲酒 AUD
やめようと思えばやめられる やめられない
問題が起きない 問題が続く
量が少ない 量より制御不能

10. 要点

  • AUDは意志の弱さではなく脳疾患
  • ホルモン・性機能・睡眠・代謝に深刻な影響
  • 早期介入で可逆性が高い