休止期脱毛症

休止期脱毛症(Telogen Effluvium, TE)は、髪の成長サイクルが乱れ、成長期(アナゲン期)から休止期(テロゲン期)へ移行する毛が急増することで、一時的な脱毛が起こる状態です。健康な頭皮では、約85~90%の毛が成長期にあり、残りが休止期にありますが、休止期脱毛症では突然多くの毛が休止期に入り、脱毛が目立つようになります。これは一時的な脱毛症であり、適切な対策を講じれば自然回復が期待できます。

休止期脱毛症の特徴と症状

1. 全体的な脱毛

• 特定の部位だけでなく、髪全体が抜けやすくなります。

• シャンプーやブラッシングの際に大量の毛が抜け落ちることが多いです。

2. 急激な脱毛の始まり

• 数週間から数か月後に大量脱毛が始まり、原因となる出来事からの時間差があります。

3. 一時的な症状

• 毛根がダメージを受けていないため、通常は数か月から1年で自然に回復します。

4. 頭皮に目立つ変化はない

• 頭皮に炎症やかゆみが生じることはあまりなく、特定の薄毛のパターンも見られません。

休止期脱毛症の原因

1. 精神的・身体的ストレス

• 大きなストレスが毛周期を乱し、成長期の毛が一斉に休止期へ移行します。

2. 出産後(産後脱毛症)

• 妊娠中はエストロゲンの影響で髪が抜けにくくなりますが、出産後にホルモンレベルが急激に変化するため、一時的な脱毛が見られます。

3. 病気や手術、発熱

• 急性の病気や手術後、新型コロナウイルス感染症などの高熱が原因で発症することがあります。

4. 栄養不足

• 鉄分、亜鉛、ビタミンDの欠乏や、極端なダイエットが原因で発症することがあります。

5. 薬の副作用

• 抗うつ薬、血圧降下剤、抗がん剤などの服用が引き金になることがあります。

6. ホルモンバランスの変化

• 甲状腺機能の異常や、避妊薬の中止も脱毛の原因になります。

診断方法

1. 問診

• ストレスやホルモン変化、病歴、薬の使用状況について確認します。

2. 視診と引っ張りテスト

• 医師が毛を軽く引っ張り、抜けた毛の数を確認することで、脱毛の程度を評価します。

3. 毛根の顕微鏡検査(トリコグラム)

• 抜けた毛の根元の状態を調べ、休止期の毛の割合を確認します。

4. 血液検査

• 鉄欠乏、甲状腺異常、栄養状態など、脱毛の原因を特定するために行います。

休止期脱毛症の治療法とケア

1. 原因の特定と除去

• ストレス管理、栄養不足の改善、ホルモンバランスの調整が基本です。

2. 栄養補給

• 鉄分、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB群を含む食事を摂りましょう。

3. ストレス管理

• ヨガ、運動、瞑想などで心身のストレスを軽減します。

4. シャンプーやヘアケアの見直し

• 頭皮に優しいシャンプーを使い、頭皮環境を整えましょう。

5. ホルモン治療(必要な場合)

• 甲状腺異常などがある場合は、専門医の指導のもとで治療します。

6. ミノキシジルの使用(必要な場合)

• 医師の指導のもとで使用し、発毛を促進します。

7. 育毛サロンや専門クリニックでのケア

• 血行促進を目的とした頭皮マッサージや低出力レーザー治療が効果的です。

予後と回復の目安

• 休止期脱毛症は一時的であるため、通常は6~12か月で自然回復します。

• しかし、ストレスや栄養不足が続くと、回復が遅れることもあります。

• 産後脱毛の場合、約6か月で改善することが多いです。

まとめ

休止期脱毛症は、ストレスやホルモン変化、栄養不足など、様々な要因によって引き起こされる一時的な脱毛症です。原因を特定し、生活習慣や栄養状態を改善することで自然に回復します。気になる症状が続く場合は、専門医の診断を受け、適切なケアを行うことが重要です。

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