サルコペニアと脱毛症

サルコペニア(筋肉量や筋力の低下)と脱毛症(特に男性型脱毛症や女性型脱毛症)は、どちらも加齢に伴って発症する可能性があり、いくつかの共通点や関連性があります。ただし、これらは直接的な因果関係を持つものではなく、それぞれの病態が異なるメカニズムで進行します。以下に、サルコペニアと脱毛症の関連性について説明します。

1. ホルモンの影響

サルコペニアと脱毛症の共通の要因の一つは、ホルモンの影響です。

1.1 男性ホルモン(テストステロン)

  • 脱毛症: 男性型脱毛症(AGA)は、主に男性ホルモンであるテストステロンの影響を受けます。テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることで、毛根が縮小し、毛髪の成長が阻害されるため、脱毛が進行します。
  • サルコペニア: テストステロンは筋肉の合成にも重要な役割を果たしており、低下すると筋肉量の減少(サルコペニア)を引き起こすことがあります。加齢に伴ってテストステロンの分泌が減少すると、筋肉量が減少し、筋力が低下することがあります。

1.2 エストロゲンの低下(特に女性)

  • 脱毛症: 女性型脱毛症は、エストロゲンの減少によって進行することがあります。特に閉経後の女性は、エストロゲンの低下により毛髪の成長が抑制されることが知られています。
  • サルコペニア: エストロゲンは筋肉の維持にも関与しており、エストロゲンの低下は筋肉量の減少を促進します。閉経後にエストロゲンの分泌が減少すると、女性もサルコペニアのリスクが高まります。

2. 炎症の影響

慢性的な炎症がサルコペニアと脱毛症の両方に影響を与えることがあります。

  • サルコペニア: 慢性炎症(特に高齢者における炎症)は筋肉の分解を促進し、サルコペニアの進行を加速させることがあります。炎症によって筋肉の修復が妨げられるため、筋力が低下します。
  • 脱毛症: 炎症は毛根に対しても影響を及ぼし、毛髪の成長サイクルを乱すことがあります。特に、自己免疫疾患による脱毛症(円形脱毛症など)では、免疫システムによる炎症が毛根に損傷を与え、脱毛が引き起こされます。

3. 栄養状態の影響

サルコペニアと脱毛症は、栄養不足が原因で悪化することがあります。特に、以下の栄養素の不足が影響を与えます。

3.1 たんぱく質不足

  • サルコペニア: たんぱく質が不足すると、筋肉の合成が低下し、筋肉量が減少します。高齢者は消化能力が低下しがちで、たんぱく質の摂取が不足しやすいため、サルコペニアのリスクが高くなります。
  • 脱毛症: たんぱく質は髪の毛の主成分であるケラチンの合成にも関与しており、不足すると毛髪の成長が遅くなり、脱毛が進行することがあります。

3.2 ビタミンやミネラルの不足

  • サルコペニア: ビタミンDやカルシウム、マグネシウムなどが不足すると、筋肉の健康が損なわれ、サルコペニアの進行を促進する可能性があります。
  • 脱毛症: ビタミンB群、ビタミンD、亜鉛などは毛髪の健康に重要な役割を果たしています。これらの栄養素が不足すると、髪の成長が妨げられ、脱毛が進むことがあります。

4. 加齢の影響

加齢はサルコペニアと脱毛症の両方を引き起こす主要な因子です。年齢を重ねることで、筋肉量や筋力が減少する一方で、毛髪も薄くなり、成長サイクルが短くなることが一般的です。加齢に伴うホルモンの変化、炎症、栄養不足などが、サルコペニアと脱毛症を引き起こす要因となります。

5. 生活習慣の影響

不規則な生活習慣やストレスも、サルコペニアと脱毛症の両方に悪影響を与える可能性があります。

  • ストレス: ストレスは脱毛症(特に円形脱毛症や休止期脱毛症)を引き起こすことが知られています。また、慢性的なストレスは筋肉の分解を促進し、サルコペニアの進行を加速することもあります。
  • 運動不足: 運動不足は筋肉量の減少(サルコペニア)を招く一方で、血行が悪化し、髪の毛の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。

6. 治療の影響

サルコペニアと脱毛症の治療においても、治療法が共通している場合があります。例えば、ホルモン補充療法や筋力トレーニング、栄養補助食品の摂取などは、両方の問題に対して効果を示すことがあります。

まとめ

サルコペニアと脱毛症は、加齢、ホルモンの変化、栄養不足、慢性炎症などの共通の要因に影響を受けますが、直接的な因果関係は明確には証明されていません。ただし、これらの要因が同時に存在することで、両方の状態が悪化する可能性があります。したがって、サルコペニアと脱毛症の予防・改善には、健康的な生活習慣や適切な治療が重要です。

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