アデノシン外用はAGA・FAGAに有効?

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知って選ぶ。薄毛治療のエビデンス

「知って選ぶ。薄毛治療のエビデンス」

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」CQ1〜14を、患者さん向けにわかりやすく読み解く

CQ6 アデノシン外用はAGA(男性型脱毛症)・FAGA(女性型脱毛症)に有効?ガイドラインの推奨度B・C1をわかりやすく解説

男性AGAでは「行うよう勧める」、女性型脱毛症では「行ってもよい」。0.75%アデノシンの臨床試験、毛髪の太さへの効果、5%ミノキシジルとの比較まで解説します

 

AGA(男性型脱毛症)の外用治療というと、まずミノキシジルを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、アデノシンについても独立したClinical Question(CQ)が設けられています。CQ6は、「アデノシンの外用は有用か?」という問いです。ガイドラインの結論は、

男性型脱毛症:推奨度B
女性型脱毛症:推奨度C1

です。推奨文では、男性型脱毛症には「アデノシンの外用を行うよう勧める」、女性型脱毛症には「行ってもよい」とされています。男性については3件、女性については1件のランダム化比較試験が評価の根拠となっています。CQ3のミノキシジル外用が推奨度Aだったのに対し、なぜアデノシンは男性B、女性C1なのでしょうか。患者さんの立場から詳しく読み解いてみましょう。


そもそもアデノシンとは?

アデノシンは、人間の体内にも存在する物質です。毛髪については、毛を作るうえで重要な毛乳頭細胞などへ作用し、毛髪の成長に関係するシグナルに影響する可能性が研究されています。基礎研究では、アデノシンが毛乳頭細胞のアデノシンA2B受容体を介して、毛髪の成長に関係するFGF-7(線維芽細胞増殖因子7)の発現を促すことが示されています。また、女性型脱毛症を対象とした臨床研究でも、アデノシンによる成長期毛や太い毛の増加が検討されています。(PubMed) ただし、「アデノシンを塗れば新しい毛包が作られる」という意味ではありません。臨床試験で主に確認されているのは、細くなった毛の割合、太い毛の割合、毛髪密度などの変化です。AGAによって細く短くなっている毛髪を、より太く成長させる方向から働きかける治療と考えると分かりやすいでしょう。


なぜ男性AGAでは推奨度Bなの?

2017年版ガイドラインでは、男性型脱毛症に対するアデノシン外用について3件のランダム化比較試験を評価しています。ランダム化比較試験とは、治療を行うグループと対照グループを比較して、本当に治療による違いが生じているのかを検討する研究方法です。したがってアデノシンは、単に、

「育毛成分として昔から使われている」
「使用者の評判がよい」

という理由でBになっているわけではありません。実際に人を対象とした比較試験で、毛髪の太さや密度の改善が確認されていることが推奨の根拠となっています。


0.75%アデノシンを6か月使用した試験では?

ガイドラインで最初に紹介されているのが、男性101人を対象として、0.75%アデノシン配合ローションを6か月間使用したランダム化比較試験です。毛髪径、軟毛率、太毛率について「中等度改善以上」と評価された割合は、

グループ 中等度改善以上
0.75%アデノシン群 41/51人(80.4%)
対照群 16/50人(32.0%)

でした。かなり大きな差に見えます。ただし、この80.4%を「80%の人に髪が生えた」と読み替えてはいけません。評価したのは単純な「発毛した・しなかった」ではなく、毛髪径や軟毛率、太毛率など複数の項目を用いた改善度です。患者さん向けには、

6か月間の使用で、細い毛と太い毛の割合など、AGAによる毛髪の軟毛化に関係する指標が対照群より改善した

と理解するのが適切です。


「軟毛が減って太毛が増える」とはどういうこと?

AGAを理解するうえで、この点は重要です。AGAでは突然すべての毛がなくなるわけではありません。AGAの影響を受けた毛包では、

太く長い毛
→ 少し細い毛
→ 短く細い毛
→ 目立ちにくい毛

というように、徐々に毛髪が細くなっていきます。これを毛包のミニチュア化、毛髪の軟毛化などと呼びます。したがってAGA治療では、単純に毛髪の本数だけではなく、

細い毛が減ったか
太い毛が増えたか
毛髪径が改善したか

も重要な評価項目になります。


38人の試験でも太い毛が増加

別のランダム化比較試験では、男性38人が0.75%アデノシン配合ローションを6か月使用しました。その結果、対照群と比べて、毛髪径40μm未満の軟毛率が有意に減少し、毛髪径60μm以上の太毛率が有意に増加しました。さらに頭髪密度についても有意な増加が確認されています。つまりアデノシンについては、「毛を太くする方向」だけではなく、毛髪密度についても改善を示した研究があるということです。


アデノシンと5%ミノキシジルを直接比較した研究もある

CQ6で特に興味深いのが、ミノキシジルとの直接比較です。男性94人を対象に、0.75%アデノシン配合ローションと、5%ミノキシジルローションを6か月間比較したランダム化比較試験があります。この研究では、病変部の太毛率について両群に有意差が認められませんでした。これを受け、ガイドラインでは0.75%アデノシンについて、5%ミノキシジルと同等の有用性があることが示唆されたと紹介しています。


では、アデノシンはミノキシジルと「同じ効果」と考えてよい?

ここは慎重に読む必要があります。この比較試験で差がなかったからといって、「アデノシン=5%ミノキシジル」と結論づけることはできません。理由の一つは、対象が94人という比較的小規模な試験だったことです。また、「太毛率」という一つの評価項目で有意差がなかったことと、あらゆる発毛効果、安全性、長期成績が同等であることは別問題です。ガイドラインの最終評価を見れば、この違いが分かります。

外用治療 男性AGAの推奨度
5%ミノキシジル A
アデノシン B

つまり2017年版ガイドラインは、比較研究を評価しつつも、医学的根拠全体としてはミノキシジル外用を一段高く評価しています。


「ミノキシジルと同等」という広告表現を見るときの注意点

この研究結果は患者さんにとっても興味深いものですが、説明の仕方には注意が必要です。正確には、「94人を対象とした6か月の比較試験で、病変部の太毛率について有意差がなかった」という結果です。そこから、

「ミノキシジルと完全に同じ発毛効果」
「ミノキシジルより優れている」
「ミノキシジルの代わりになることが証明されている」

とまで広げて解釈することはできません。医学研究では、「有意差が確認されなかった」ことと「完全に同等であることが証明された」ことは同じではないからです。患者さんが治療や育毛製品を比較するときには、この違いを知っておくとよいでしょう。


女性型脱毛症では効果がある?

女性についても、有効性を示した研究があります。2017年版ガイドラインでは、女性30人を対象として0.75%アデノシン配合ローションを12か月間使用したランダム化比較試験を紹介しています。成長期毛伸長率と太毛率について「軽度改善以上」と評価されたのは、

グループ 軽度改善以上
アデノシン群 11/13人(85%)
プラセボ群 5/14人(36%)

でした。さらに、使用6か月後と12か月後には、成長期毛伸長率と毛髪径80μm以上の太毛率がアデノシン群で有意に増加していました。PubMedに掲載されている同研究でも、アデノシンが女性型脱毛症で成長期毛の成長と太い毛の割合を改善したことが報告されています。(PubMed)


女性でも効果が確認されたのに、なぜC1なの?

これがCQ6で非常に重要なポイントです。女性型脱毛症でも、プラセボより良好な結果を示したランダム化比較試験があります。それでも推奨度は、

C1=行ってもよい

です。

理由は、女性についての研究数と症例数がまだ少なかったためです。2017年版ガイドライン作成時点で、

男性:ランダム化比較試験3件
女性:ランダム化比較試験1件

でした。女性の試験はわずか30人という小規模なものでした。ガイドラインは、「効果が認められなかったからC1」としているのではありません。むしろ、

女性にも有効性を示す研究はある。しかし、その根拠はまだ十分とはいえない。

という判断です。ガイドライン自身も、女性については有効性を示す根拠がまだ不足している一方、副作用が軽微であることなどを考慮してC1としたと説明しています。


BとC1の違いを患者さん向けに考えると?

CQ6を簡単に整理すると、次のようになります。

男性型脱毛症 女性型脱毛症
推奨度 B C1
ガイドライン表現 行うよう勧める 行ってもよい
RCT 3件 1件
主な評価 毛髪径、軟毛率、太毛率、密度 成長期毛伸長率、太毛率
患者さん向けの理解 有力な外用治療の一つ 選択肢にはなるが、根拠は男性ほど多くない

したがって、男女で同じアデノシンを使用してもよいとしても、エビデンスの厚みは同じではないということです。


アデノシンはどのくらい使えば効果を判断できる?

CQ6で評価されている男性の主な研究は6か月間です。女性の試験は12か月間行われ、6か月・12か月の時点で変化が評価されています。このためアデノシンも、「数日塗って抜け毛が減るかを見る」ような治療ではありません。毛髪は毛周期にしたがって成長するため、少なくとも数か月単位で経過を見る必要があります。また、治療効果を判断するときには、毎日鏡を見るだけでは変化に気づきにくいため、同じ照明・同じ角度・同じ髪の長さに近い条件で定期的に写真を撮ると比較しやすくなります。


アデノシンは「発毛」より「髪を太くする」治療?

臨床試験の評価項目を見ると、アデノシンでは特に、

軟毛率の減少
太毛率の増加
毛髪径の改善

が繰り返し評価されています。そのため患者さんには、AGAで細くなっている毛髪を、より太く成長させることが期待される外用成分と説明すると理解しやすいでしょう。ただし、頭髪密度の増加を示した研究もあるため、「毛を太くする作用だけ」と限定する必要もありません。重要なのは、すでに完全に失われた毛包を新しく作る治療ではないという点です。


フィナステリドやデュタステリドとは何が違う?

男性AGAでは、治療薬によって作用する場所が異なります。フィナステリドやデュタステリドは、AGAの進行に関係するDHTの生成を抑える内服薬です。一方、アデノシンは頭皮へ外用し、毛包・毛乳頭側から毛髪の成長を促す方向の治療です。

治療 主な治療の方向 男性AGA推奨度
フィナステリド内服 DHT生成を抑える A
デュタステリド内服 DHT生成を抑える A
ミノキシジル外用 発毛を促す A
アデノシン外用 毛髪成長・太毛化を促す B

つまりアデノシンを使用しているからといって、AGAの原因となるDHTそのものを抑えているわけではありません。


アデノシンだけでAGA治療は十分?

これはAGAの程度や治療目的によって異なります。ガイドライン上、男性AGAではアデノシンはBなので、医学的根拠をもつ選択肢の一つです。しかし、同じガイドラインでは、

フィナステリドA
デュタステリドA
ミノキシジル外用A

となっています。したがって、2017年版ガイドライン全体を患者さん向けに読むと、アデノシンがこれらのA評価の標準治療より優先されると示されているわけではありません。例えば、

「内服薬は使用したくない」
「外用治療の選択肢を増やしたい」
「他の治療について副作用などの問題がある」

といった場合に検討する余地がありますが、AGAの状態や希望に応じて治療方法を考える必要があります。


ミノキシジルが使えない人には選択肢になる?

アデノシンは外用による発毛・太毛化の研究があるため、ミノキシジルとは異なる外用治療として検討できます。例えばミノキシジル外用で強い頭皮刺激などが生じた場合に、別の外用方法について医師や薬剤師へ相談する余地があります。ただし、「ミノキシジルが使えない人は必ずアデノシンに変更すればよい」というところまで2017年版ガイドラインが規定しているわけではありません。治療を変更するときには、ミノキシジルそのものが原因なのか、製剤に含まれる別の成分が原因なのかなども含めて判断する必要があります。


アデノシンの副作用は?

2017年版ガイドラインは、アデノシンについて副作用が軽微である点を、特に女性型脱毛症をC1とした理由の一つとして挙げています。これはアデノシンのメリットの一つと考えられます。ただし、「副作用が軽微」=「誰にでも副作用が起こらない」という意味ではありません。頭皮へ使用する外用製品では、有効成分だけでなく、基剤やその他の配合成分によって刺激、かゆみ、赤みなどが生じる可能性があります。異常が続く場合には使用を漫然と継続せず、医師や薬剤師へ相談することが適切です。


アデノシン配合なら濃度に関係なくガイドラインB?

これも注意したいポイントです。CQ6で主に研究されているのは0.75%アデノシン配合ローションです。したがって、「アデノシンという名前が成分表に入っていれば、どんな濃度・どんな製品でもガイドラインB」という意味ではありません。同じ成分でも、

濃度
基剤
使用量
使用頻度
製剤設計

などによって条件は異なります。「アデノシン配合」という表示だけで、CQ6の臨床試験と同じ治療条件だと判断しないことが大切です。


育毛剤と医薬品を同じように比較してよい?

AGA関連製品では「育毛」「発毛」「毛髪を太くする」など、似た言葉が使われています。しかし、製品の法的な区分や承認された効能と、ガイドライン上の臨床研究による評価は別のものです。CQ6は、アデノシン外用によってAGA・女性型脱毛症の毛髪指標が改善するかという医学的な観点から評価しています。そのため、

「店頭で購入できるから効果が弱い」
「医療機関で販売しているから効果が強い」

とも単純には判断できません。見るべきなのは、実際に何という成分が、どの濃度で、どのような研究結果をもっているかです。


2025年の研究レビューから見ても「期待はできるがデータ量は限定的」

2017年版以降にもアデノシンの研究は蓄積されています。2025年に公表されたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、アデノシン外用に関する7件の臨床試験が検討され、毛髪の太さ、密度、脱毛などについて改善を示す報告が確認されました。一方で、研究の規模が小さいことや研究デザイン上の限界などから、全体としてのエビデンスの確実性は低い~中程度であり、より質の高い研究が必要と評価されています。(PubMed)

これは2017年版ガイドラインの、男性B、女性C1という慎重な位置づけを理解するうえでも参考になります。つまり、

効果を期待できる研究はある。しかし、ミノキシジルほど大規模で強固な臨床データが蓄積されているわけではない

という位置づけです。


CQ6についてよくある疑問

よくある疑問 患者さん向けの答え
アデノシンは男性AGAに効く? 推奨度B。行うよう勧める
女性の薄毛にも使える? C1。行ってもよい
なぜ男女で評価が違う? 男性はRCT3件、女性は1件で、女性の根拠がまだ少ない
どの濃度が研究された? 主に0.75%
すぐ効く? 主な男性試験は6か月。数か月単位で評価する
髪は太くなる? 軟毛率減少・太毛率増加を示した試験がある
毛髪密度も増える? 有意な密度増加を示した研究がある
5%ミノキシジルと同じ? 小規模比較試験で太毛率に有意差なし。ただし完全な同等性を意味しない
ミノキシジルより推奨度は高い? いいえ。ミノキシジル外用A、アデノシン男性B
副作用は? ガイドラインでは比較的軽微と評価されている

「アデノシンB」と「ミノキシジルA」の違いをどう考える?

CQ3とCQ6を続けて読むと、この違いが分かりやすくなります。ミノキシジル外用については、男性だけでも多数のランダム化比較試験とシステマティックレビューが存在します。一方、アデノシンは2017年版作成時点では男性3件、女性1件のランダム化比較試験です。つまり、推奨度の違いは単純な「発毛力の強さ」ではなく、医学的根拠の量と確実性の違いでもあります。アデノシンに効果がないからBなのではありません。男性AGAでは実際に有効性を示す複数の比較試験があるため、ガイドラインは明確に「行うよう勧める」としています。


CQ6から分かること―アデノシンは「根拠のある選択肢」だが、ミノキシジルとは位置づけが異なる

日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」のCQ6では、

男性型脱毛症:B
女性型脱毛症:C1

と評価されています。男性では、0.75%アデノシン配合ローションを6か月使用した複数のランダム化比較試験で、軟毛率の低下、太毛率の上昇、毛髪密度の増加などが確認されています。また5%ミノキシジルとの94人の比較試験では、太毛率に有意差がなく、ガイドラインではミノキシジルと同等の有用性が示唆されたとしています。ただし、これを「両者の発毛効果が完全に同一」と読むことはできません。女性でも、30人を対象とした12か月の試験では良好な結果が確認されています。それでもC1なのは、効果がないからではなく、2017年版作成時点では研究数・症例数が十分ではなかったからです。したがって患者さん向けにCQ6を一言で整理するなら、「アデノシンはAGAへの効果を支持する臨床研究があり、特に男性ではガイドラインが使用を勧めている。ただし、ミノキシジル外用ほどエビデンスが厚いわけではない」ということになります。AGA治療を選ぶときには、「育毛成分」という名称だけで判断するのではなく、どの成分なのか、どの濃度なのか、どの程度の臨床試験があり、ガイドラインではどこに位置づけられているのかまで確認すると、それぞれの治療の違いをより正確に理解できます。

※本稿は、日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」のCQ6を中心に一般患者向けに整理したものです。同ガイドラインでは、アデノシンについて男性型脱毛症B、女性型脱毛症C1と評価しています。

「知って選ぶ。薄毛治療のエビデンス」

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」CQ1〜14を、患者さん向けにわかりやすく読み解く

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