糖尿病と更年期の関係
更年期(おおよそ45~55歳)に入ると、女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少がさまざまな影響を及ぼし、糖尿病の発症リスクや血糖値のコントロールに関係してきます。
1. エストロゲンの減少が糖代謝に与える影響
エストロゲンはインスリンの働きを助ける作用を持っています。更年期になるとエストロゲンが減少し、以下のような変化が起こります。
- インスリン抵抗性の増加 → インスリンの効きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなる
- 内臓脂肪の増加 → 体脂肪の分布が変わり、お腹周りに脂肪がつきやすくなる(メタボリックシンドロームのリスク上昇)
- 脂質代謝の変化 → LDL(悪玉コレステロール)が増え、動脈硬化が進みやすくなる
これらの変化により、2型糖尿病の発症リスクが上昇し、既に糖尿病の人は血糖コントロールが悪化しやすくなるのです。
2. 更年期症状と糖尿病の症状の類似点
更年期の症状と糖尿病の症状は重なる部分が多く、見分けにくいことがあります。
更年期の症状 | 糖尿病の症状 |
---|---|
ほてり・発汗 | 多汗(高血糖による) |
疲労感・倦怠感 | だるさ・疲れやすさ |
イライラ・気分の落ち込み | 気分の変動(血糖値の影響) |
めまい・動悸 | 高血糖や低血糖による影響 |
このため、「更年期だから」と思って放置すると、実は糖尿病だったというケースもあります。
3. 更年期のホルモン補充療法(HRT)と糖尿病
ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)は、更年期症状を和らげるためにエストロゲンを補う治療ですが、糖尿病に対しても影響を与える可能性があります。
- インスリン感受性を改善する可能性がある(血糖値が下がりやすくなる)
- ただし、投与方法や個人差によりリスクもあるため、医師と相談が必要
HRTを行う際は、血糖値の変化を定期的に確認しながら進めることが重要です。
4. 更年期の糖尿病予防・対策
更年期の時期に糖尿病を予防・管理するためには、以下の生活習慣が重要です。
食事の工夫
- 糖質の摂取を適量にし、血糖値の急上昇を防ぐ(低GI食品の活用)
- タンパク質や食物繊維をバランスよく摂取
- 悪玉コレステロール(LDL)を増やさない食生活を心がける
適度な運動
- ウォーキング、ストレッチ、ヨガなどを習慣にする
- 無理のない範囲で筋トレを行い、筋肉量を維持(インスリンの働きを助ける)
ストレス管理・良質な睡眠
- 自律神経の乱れを防ぐために、リラックスする時間をつくる
- 睡眠不足はインスリン抵抗性を悪化させるため、規則正しい生活を心がける
定期的な健康診断
- 空腹時血糖値やHbA1cのチェックを習慣化する
- 更年期だからと自己判断せず、糖尿病の検査も視野に入れる
まとめ
✔ 更年期にエストロゲンが減少すると、インスリンの働きが低下し、糖尿病のリスクが上がる
✔ 更年期の症状と糖尿病の症状が似ているため、見逃しやすい
✔ HRTは糖尿病の改善に役立つ可能性があるが、医師と相談が必要
✔ 食事・運動・ストレス管理を意識し、血糖値のコントロールを心がける
更年期は身体の変化が大きい時期ですが、適切な対策を取ることで糖尿病のリスクを下げ、健康的な生活を送ることができます。