
監修医に報酬が支払われているとき、読者に何を伝えるべきか
医師が医療記事を監修し、その対価として報酬を受け取ること自体は、直ちに不適切とは限りません。問題は、読者がその記事を「医師が独立した立場から書いた・推薦した」と受け取る一方で、実際には企業や医療機関から依頼され、報酬を得て関与していたことが見えない場合です。
読者が記事の背景を判断できるようにするには、誰が依頼したのか、医師がどのような役割を担ったのか、報酬を受けているのかを、記事の内容に即して明確に示すことが大切です。
報酬を受けた医師のコメントは「事業者の表示」になり得る
消費者庁は、専門家の客観的な意見のように見えるコメントでも、事業者が専門家に報酬を支払って依頼し、事業者の商品・サービスに関する表示として掲載している場合は、「事業者の表示」にあたる可能性があると説明しています。その場合、読者が該当箇所だけを見ても、事業者の依頼による表示だとわかるようにする必要があります。caa.go.jp
サイトの冒頭に「広告を含みます」と一度書くだけでは、専門家のコメント部分を読んだ人にも広告であることが伝わるとは限りません。消費者庁のQ&Aは、専門家のコメントの近くに、事業者から依頼を受けて掲載していることを記載する例を示しています。消費者庁
読者に伝えたい4つのこと
1. 誰が依頼したのか
医療機関、広告主、広告代理店、記事制作会社など、監修を依頼した主体を示します。記事制作会社を通じて依頼された場合など、実際の広告主や記事の掲載目的が別にあるなら、読者が関係を誤解しないように説明します。
「監修者に報酬を支払いました」という記載だけでは、誰が何のために依頼したのかが伝わらないことがあります。
2. 報酬を受けているか
監修医が依頼に基づいて報酬を受け取っている場合は、その関係が読者に伝わるように記載します。謝礼、監修料、業務委託料など、契約上の呼び方だけでなく、記事への関与が依頼による有償業務なのかがわかる表現にします。
消費者庁の例では、依頼元の企業名と、専門家に依頼したコメントを編集して掲載したことを示しています。規制の趣旨は、読者がそのコメントを独立した第三者の意見と誤認しないようにすることです。消費者庁
3. 医師が何をしたのか
「監修」とひとことでまとめず、医師が実際に担った役割を説明します。たとえば、記事の執筆、医学的な内容の確認、特定部分へのコメント、最終稿の確認など、関与の範囲はさまざまです。
記事本文を医療コンテンツ会社が執筆し、医師が一部を確認したのであれば、その分担を明記します。記事を書いていない医師を「執筆者」と受け取られる表示にしたり、限定的な確認を記事全体の監修のように見せたりすると、実際の関与とのずれが生じます。
4. いつ、どこまで確認したのか
医療情報は、診療指針や承認状況などの変化によって古くなることがあります。監修日や確認日、確認した範囲を示すと、読者は情報の新しさや監修の対象を判断しやすくなります。
ただし、実際に確認していない内容まで「確認済み」と表示してはいけません。記事全体を確認していない場合は、その範囲がわかるように記載します。
監修料の金額まで公表する必要があるのか
広告表示に関する一般的な考え方では、監修料を必ず金額まで公表することより、事業者の依頼による表示であることを読者が明確に認識できるかが重視されます。消費者庁が示す専門家コメントの例も、依頼元やコメント掲載の経緯を示すもので、報酬額の記載を例示しているわけではありません。消費者庁
一方、報酬の有無や依頼関係を伏せた結果、読者が中立的な意見だと誤解するような場合は、金額を記載しないことだけでなく、関係性の説明自体が不足していないかを考える必要があります。報酬額を公開するかどうかと、商業的な関係を明らかにすることは分けて考えましょう。
「PR」と書けば十分とは限らない
「PR」「広告」「プロモーション」といった表示は、事業者による表示だと明瞭にする方法の例です。ただし、表示の場所や大きさ、見やすさ、記事全体の構成によって、読者に広告関係が伝わるかは変わります。消費者庁は、サイトの冒頭に表示があっても、専門家のコメント部分だけを見た人に広告関係が伝わらない場合には、そのコメントの近くにも説明する必要があるとしています。消費者庁
さらに、「PR」と記載しても、医療広告の内容に関する規制がなくなるわけではありません。医療広告に該当する場合は、表示内容に応じて医療広告のルールも別に確認する必要があります。厚生労働省のガイドラインは、医療機関だけでなく、広告代理店やアフィリエイターなども広告規制の対象になり得るとしています。www.mhlw.go.jp
表示文の例
実際の契約や確認範囲に合わせて、たとえば次のように記載できます。
監修について
本記事は〇〇社の依頼により、編集部が作成しました。医師の〇〇先生は、記事中の「〇〇」に関する医学的記述を確認し、監修料を受け取っています。記事の執筆は編集部が行っています。確認日:20XX年X月X日。
記事全体を確認した場合は、確認範囲を実態に合わせて「記事全体の医学的記述を確認」とします。医師が執筆も担当したなら、その役割を別に記載します。企業からの依頼がある場合は、依頼元と医師の関係がわかる表現にします。
読者が表示から確認できること
読者にとって、次の情報が明確であれば、監修の意味を判断しやすくなります。
- 依頼した企業や医療機関
- 医師が報酬を受けているか
- 記事を書いた人と監修した人
- 医師が確認した内容と範囲
- 監修・確認の日付
- 医師の資格名と認定団体
「医師監修」という肩書きだけでは、医師が記事を書いたのか、全体を確認したのか、報酬を受けているのかはわかりません。表示は、読者が監修の実態を理解できる粒度で行うことが重要です。
報酬の開示は、監修を否定するものではない
報酬を受け取っている医師だから監修に意味がない、とは限りません。専門知識に対する正当な業務報酬として、医師が内容を確認する場合もあります。
ただし、報酬や依頼関係を隠し、独立した推薦や客観的評価のように見せれば、読者は記事の背景を適切に評価できません。誰が依頼し、医師が何を行い、どのような対価を得ているのかを明示することが、監修表示の信頼性を支える基本です。
「医師監修」を読み解く|医療広告と専門家表示の見極め方
基礎知識、広告規制、監修の実態を暴く
- 「医師監修」とは何か?表示だけではわからない監修の範囲
- 医師が書いていない医療記事は「医師監修」といえるのか
- 医師と記事を結ぶマッチングサービス|監修業務の仕組み
- 「医師おすすめ」は誰の意見?推薦表示と広告の関係
- 「専門医監修」の専門医とは?資格名と認定団体の確認方法
- 非医療機関の医療広告|広告代理店やアフィリエイターにも規制は及ぶのか
- オウンドメディアの医療記事は広告か情報提供か|判断のポイント
- 記事風広告とは何か?中立的な記事に見せた医療広告の注意点
- 監修医に報酬が支払われているとき、読者に何を伝えるべきか
- 医師コメントは独立した意見か広告か|利益相反の見分け方
- 薬機法が禁じる「医師が効果を保証したように見える広告」
- 医療広告の比較・ランキング記事|「おすすめ」「No.1」の問題点
- 監修者の氏名や経歴はどう確認する?公開情報を調べる手順
- 最終原稿を確認しているか?実質的な監修に必要なチェック項目
- 公開後の更新も監修対象?医療情報の古さと再確認の仕組み
- 「監修済み」の表示をどう読むか|読者のためのチェックリスト
- 医療広告に問題を見つけたら|記録・相談・通報の基本
- 信頼できる医療コンテンツとは|執筆・監修・広告表示に求められる透明性
