16の基本的欲求

スティーブン・リース(Steven Reiss)による「16の基本的欲求(Reiss’s 16 Basic Desires)」は、人間の動機を理解するための心理学的な理論です。この理論は、個人の価値観や行動を動かす16種類の欲求を提案し、これらが人間の生存、関連性、成長に関わると考えられています。

以下に、それぞれの観点と16の欲求との関係を説明します。

1. 生存(Existence)

生存に関連する欲求は、基本的な生命維持や安全に関わるものです。これらの欲求は、身体的な生存だけでなく、心理的な安定も含みます。

  • 食欲(Eating)
    生きるための食物への欲求。食事や栄養摂取が重要。
  • 身体的安定(Physical Stability)
    健康や安全を確保したいという欲求。リスク回避や安全な環境を求める。
  • 安心感(Order)
    秩序や予測可能性を好む欲求。混乱を避け、安定した生活を求める。
  • 物質的充足(Saving)
    物質的な資源を保持したいという欲求。所有や収集への関心。

2. 関連性(Relatedness)

他者とのつながりや、社会的な関係を築くことに関する欲求です。家族や友人との絆、社会的な地位、他者からの承認が含まれます。

  • 家族愛(Family)
    家族を守り、支える欲求。子どもや親族への愛情が動機。
  • 友情(Social Contact)
    友人や他者との交流を求める欲求。孤独を避け、つながりを築く。
  • 承認欲求(Acceptance)
    他者から受け入れられたいという欲求。拒絶を恐れる。
  • 地位(Status)
    他者より優位に立ち、尊敬を得る欲求。名誉や特権を追求。

3. 成長(Growth)

自己実現やスキル向上、知識の追求といった、自分自身を発展させることへの欲求です。内面的な成長や達成感を得るための動機となります。

  • 達成欲求(Achievement)
    目標を達成し、成功を収める欲求。努力の成果を認められたい。
  • 知識欲(Curiosity)
    新しいことを学び、理解したいという欲求。知的探求心が源。
  • 独立性(Independence)
    自立したいという欲求。他者の影響を受けず、自己決定をしたい。
  • 創造性(Idealism)
    世界をより良くしたいという欲求。倫理や理想の追求。
  • 自己支配(Power)
    他者や環境をコントロールしたいという欲求。責任やリーダーシップを好む。

その他の欲求

上記の枠組みに完全には収まらない欲求も含まれます:

  • ロマンス(Romance)
    恋愛や性的な満足を求める欲求。親密な関係を築く動機。
  • 遊び(Play)
    楽しさや娯楽を求める欲求。ストレス解消や幸福感の追求。

リースの16の欲求の意義

  1. 人間の行動の多様性を説明
    リースの理論は、人それぞれの行動や選択が16の欲求の異なる強さによって説明できると主張します。
  2. 個別性を尊重
    人によってどの欲求が強いかは異なり、同じ状況でも異なる反応を引き起こします。
  3. 応用範囲が広い
    • 職場: モチベーション向上やリーダーシップの理解。
    • 教育: 生徒の学習意欲を高める戦略。
    • 心理療法: 患者の価値観や行動の背景を理解する手がかり。

まとめ

リースの16の基本的欲求は、人間の多様な行動や価値観を解明するための有力なフレームワークです。この理論は、「生存」「関連性」「成長」といった大きなカテゴリに対応しつつ、人間の行動の根底にある動機を細かく捉え、個人の特性や文化的な背景に基づいた深い洞察を提供します。

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