
「副作用がないAGA治療」はある?医療広告で注意したい安全性の断定
「副作用がない」「リスクゼロ」「安心して受けられる」――AGA治療の広告で、こうした表現を見かけることがあります。
治療を選ぶときに副作用が気になるのは自然なことです。ただし、副作用が比較的少ないことと、副作用がまったくないことは別です。治療法の説明を読むときは、魅力的な言葉だけで判断せず、どの薬をどの方法で使うのか、何が分かっていて何がまだ分かっていないのかを確認しましょう。
「副作用がない」と「副作用が確認されていない」は違う
ある研究で副作用が報告されなかったとしても、それだけで「副作用が起こらない」と証明されたことにはなりません。研究の人数や期間が限られていたり、対象となった人や投与方法が特定の条件に限られたりするためです。
また、副作用として報告されている症状でも、すべての人に起こるわけではありません。薬の種類や用量、体質、健康状態などによって、症状の出方は異なります。
したがって、広告の「副作用なし」という表示を見る際には、次のように読み分ける必要があります。
- 副作用がない:誰にも副作用が起こらないと受け取られ得る表現
- 副作用が少ない:比較対象や調査条件、頻度の根拠を確認したい表現
- この研究では報告されなかった:研究の対象者数、期間、治療方法の範囲での結果
- 特定の副作用は確立していない:その副作用を否定できる十分な証拠があるとは限らない表現
AGA治療薬にも、施術にもリスクがあります
フィナステリドの添付文書には、性欲減退や勃起機能不全などの副作用が記載されています。ミノキシジル外用薬にも、使用上の注意や副作用があり、たとえば高血圧・低血圧、心臓や腎臓の障害、むくみがある人は使用前に相談するよう記載されています。
注射や頭皮への施術には、薬剤そのものの影響に加えて、注射部位の痛み、腫れ、出血、感染など、手技に伴うリスクも考えられます。治療法が異なれば注意すべき点も異なるため、「薬の副作用が少なそう」という理由だけで全体の安全性を判断することはできません。
「内服薬は危険、注射は安全」という比較にも注意
フィナステリド・デュタステリドとミノキシジルは、薬の作用も治療上の役割も異なります。ミノキシジル注射を、内服薬の副作用を打ち消す方法や、内服薬と同じ働きをする代替治療として説明することはできません。
「内服薬では性機能障害が起こる可能性があるが、注射なら性機能へのリスクはない」と広告している場合は、比較の根拠を確認しましょう。どの薬剤・用量・注射方法を対象としたデータなのか、誰をどのくらいの期間調べたのかが示されていなければ、その断定を支える情報は十分とは言えません。
医療広告では、安全性の断定が誤解を招かないかが問われる
厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、虚偽広告や誇大広告、患者に誤認を与えるおそれのある表示が禁止されています。ガイドラインには「絶対安全な手術」のような表現が、医学上あり得ない安全性をうたう虚偽広告の例として示されています。
この例が「副作用なし」という文言すべてを自動的に違法と決めるものではありません。広告の全体像、医学的根拠、どの治療について何を保証しているかを踏まえて判断されます。ただし、十分な根拠を示さずに安全性を保証するような表現は、患者がリスクを正しく理解できなくなるおそれがあります。
医療機関の名称などが特定でき、受診を促す意図のある表示は、SNSやインターネット広告であっても医療広告に該当し得ます。厚生労働省委託の医療機関ネットパトロールも、ブログ・SNS・動画を監視対象の媒体として案内し、虚偽・誇大な表示やリスク・副作用の説明不足などを通報項目に挙げています。
自由診療では、良い点だけでなく必要な情報の確認を
自由診療の広告では、治療の利点だけを強調するのではなく、治療内容や費用、主なリスク・副作用など、患者が選択するために必要な情報を分かりやすく示すことが求められます。承認されていない薬剤や、承認された用法・用量とは異なる使い方を自由診療で行う場合には、未承認・適応外であること、入手経路、国内承認薬の有無、海外での安全性情報なども確認事項になります。
広告では副作用情報が小さく書かれていたり、リンク先をたどらないと見つからなかったりする場合もあります。治療の説明とリスクの説明が釣り合っているか、患者が実際に確認できる表示になっているかにも注目しましょう。
広告を見るときの確認ポイント
- 治療に使う薬剤・製剤の正式名称、濃度、投与方法
- 国内で承認された治療なのか、未承認・適応外の使用なのか
- 「リスクなし」の根拠となる研究の対象者数、期間、治療条件
- 主な副作用や施術に伴うリスクが具体的に説明されているか
- 治療にかかる総費用、回数、追加費用が分かるか
- 効果が得られなかった場合や、副作用が出た場合の対応が示されているか
まとめ
「副作用がないAGA治療」と断言できる治療法があるかのような広告には、慎重な見方が必要です。副作用が少ないことや、限られた研究で重大な副作用が確認されなかったことは、すべての人にリスクがないことを意味しません。
治療を選ぶときは、効果だけでなく、薬剤や方法、根拠の範囲、費用、副作用、施術に伴うリスクを確認しましょう。広告の表現だけでは分からない点があれば、治療を受ける前に医療機関へ具体的に質問することが大切です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。服用中の薬や治療の副作用が気になる場合は、処方医にご相談ください。
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